中小企業によくあるDXの失敗事例って?
- プロジェクト
- DX
突然ですが、皆様の会社や周囲でDXはどのくらい進みましたか?
DXというキーワードは2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏によって初めて提唱されました。
2018年には経済産業省が「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」を発表。これまでのビジネス手法を続けた場合、2025年以降に毎年最大12兆円の経済損失が生じると予測しました。
これを「2025年の崖」と呼び、日本中の経営層が一気にDX推進へ動き出すきっかけとなりました。
この記事を公開しているのが2023年6月。2025年まであと1年半です。規模にもよりますが、各企業とも佳境や最後の追い込みを迎えているのではないでしょうか。
既にDXのためシステムを導入したりIT関連のサービスを運用したりしている企業はたくさんありますが、実は失敗したという例も沢山上がってきています。
今回は中小企業にありがちな失敗例をいくつか紹介します。是非参考にしてみてください。
中小企業にありがちな失敗例
失敗例1 自社の企業規模にあわないシステムを選んでしまった
こちらは中小企業に一番多い失敗理由です。具体的には
・進められるままに導入したが不要な機能がたくさんあり、オーバースペックだった
・最新のシステム過ぎて現場のユーザーが使いこなせなかった
です。
DXを推進するには、達成したい目的にあわせてシステムやツールを選択するのがなにより大切です。
この後紹介する運用や費用の項目とも関連するのですが、選定の際に何が必要で何が不要なのかを具体的に整理しておかないと、自社にあっていないシステムを選定してしまい新システムの運用が定着せず、費用だけが余計にかかってしまう状態となってしまいます。
失敗例2 自社の運用にあっていなかった、あわせていなかった
・限定的なメンバーでシステムを選定し導入を決定したため、全社でいざ運用開始しようとしたときに、現場で求めていたことが出来なかった
・既存のシステムと一部機能が重複しており、その部分の入力や出力の手間が増えてしまった
・メーカー担当者の営業を受けているうちに「これで何でも出来るようになる!」と思ったが、運用体制が追いつかなかった
これらは導入するシステムを選定する際に、ユーザーとなる現場社員や業務全体を経験したことがある社員が参加していない場合に起こりがちな失敗です。
中小企業では、DX推進のプロジェクトを立ち上げる場合メンバーは通常業務と兼任してプロジェクトを進めることが多く、導入に関してのユーザーへのヒアリングの時間や内容が足りないまま導入を進めてしまい、実は検討不足だったという結果に陥ってしまうことがよくあります。
失敗例3 全体コストが試算出来ていなかった
・月額費用のコストダウンにのみ注目してしまい、会社全体のコストの試算や想像がたりなかった
・導入後の保守業務を外注したら、細かい設定変更や改修の度に予想以上の費用がかかってしまった
DXの目的の一つに「競合他社より優位に立つ為に、デジタル技術を用いてビジネスを改善していく」ということがあります。
それまでかかっていたシステムの内製や保守のコストを削減するために、最新システムへの移行や保守作業の外注化はDXとしてはとても有効な手段ですが、会社全体でどのくらいコストがかかるのかを把握できていないと、思いがけない出費が発生することがあります。
費用以外でも、外注先への依頼対応や定例の打ち合わせのために担当者の仕事量が増えてしまうという労働コストが増えるケースもあります。
失敗例4 システムを導入することが目的となってしまった
トップダウンの傾向が強い企業にあるケースです。
経営層から「うちもDX化しろ」と言われてシステムの導入の検討と状況の報告を重ねていくうちに、システムを導入することがゴールとなってしまい、DXの本来の目的であるビジネス手法の改善に繋がらなかったものです。
また、導入した後にどのくらい課題が解決できたのか、ビジネス手法を改善出来たのか計測しないまま、なあなあでとりあえず「導入して使っている」だけの状態になってしまっているケースもあります。
これでは、DX化による結果が出ていない・計測できていないため、経営層から「DXは失敗だった」と評価されてしまいかねません。
具体的な解決策
これから始めるDXや既に着手しているDXのプロジェクトを失敗させないために、下記のポイントに沿って検討を進めることをオススメします。
ポイント1 DXによって「どうなりたいか」を明確にする
ゴールが明確に定まっていないと、DXはほぼ失敗します。経営層がどのようなビジョンを持っていて、どのようなゴールを想定しているのかを明確にする必要があります。
また、管理層や現場のスタッフでは日頃感じている課題やどう改善したいかというビジョンは、経営層が持っているものとは全く違う場合があります。
それぞれの部署や立場から沢山の声を集めた上で、会社として「どうなりたいか」を決めた後にそれに沿った戦略を立て、それらを企業全体で共有しましょう。
ポイント2 自社での運用を詳細にイメージする
どんなに優れたシステムを導入しても、自社の運用とマッチしていなければ定着しません。
実際に利用するユーザーのITのスキルレベルや勤務体制、社内外の連携などを加味した上で、どんな運用方法になりそうかシミュレーションしてみてください。
シミュレーションが出来たら、フローに起こして関係者や現場のスタッフに確認を依頼します。
「実はエクセルのマクロを組んで運用している」とか「この業務は実は別部署の〇〇さんにお願いしている」など、把握していない属人化していた業務があったり、もっと踏み込んでDX化できる部分があったりします。
想定している運用方法とのズレを無くすための大切なプロセスですので、是非いろんな人を巻き込んで確認をお願いしてください。
ポイント3 小さなDX成功を積み重ねる
DX化プロジェクトは大規模で何もかもをIT化して・・というイメージがあるかもしれませんが、実はそうでなくても全然OKです。
前述した通りいろんな部署や立場の人を巻き込むことは必要なのですが、DXの施策を一度に全てを実施する必要は全く無く、むしろ小さな施策から実施させて回数を重ねていく方が上手くいきます。
例えば、申請書類の電子化をしたい場合では、ワークフローのシステム導入を検討から始めて社内全ての申請書類を電子化するよりも、まずは一種類をGoogleフォームや安価なツールを使って電子化します。
その導入の過程で出た課題や成功体験を元に、他の申請書類の電子化の検討を第2フェーズとして始めていくほうがDXに対する社内の理解も得やすく、その後のプロジェクトを進めやすくなります。
まとめ
2020年からのコロナ禍も相まって、DXを謳うシステムやツールが一気に世の中に露出するようになりました。
新しいシステムやツールがどんどんリリースされると、企業の経営層やDX担当者も「これからは新しい時代だ!先進的なシステムを取り入れたい!」と強く思ったことと思います。
ですが、あくまでもDXは自社のビジネスの変革のための手段のひとつ。DX化本来の目的をしっかり持ち、企業全体で共有して自社にとって本当に必要な対応は何かを整理するところから始めてください。
是非、参考にしていただけると幸いです。