多店舗チェーンにノウハウ管理を導入するポイント、現場に定着させる手順とツール選び

多店舗チェーンにノウハウ管理を導入するポイント|現場に定着させる手順とツール選び

多店舗チェーンでは、成果を上げている店舗のノウハウを全店へ展開できれば、店舗全体の底上げにつながります。

しかし、ノウハウの多くは担当者の経験や感覚に基づく「暗黙知」であるため言語化しづらく、退職による消失や店舗間で共有・定着しないといった課題が少なくありません。

また、ノウハウ管理を導入しようとしても、「現場で本当に活用されるのか」「運用を定着させられるのか」と悩む本部担当者も多いでしょう。

本記事では、多店舗チェーンでノウハウ管理を導入・定着させるポイントと、現場の成功事例を全店へ展開する仕組みづくりをわかりやすく解説します。

ノウハウ管理とは

ノウハウとは、優秀なスタッフが現場の経験から自然に身につけた実践的な知識のことです。

言語化しにくく、個人の経験の中に根ざしているこうした知識を暗黙知と呼びます。

多店舗チェーンで言うと、天候に合わせた陳列の工夫、季節フェアのディスプレイのコツ、お客さまへの声かけのタイミングなど、日常業務の中で培われたものです。

つまりノウハウ管理とは、こうした現場の暗黙知を見える化し、全店舗で活用できる状態にする取り組みとして本コンテンツではお話ししていきます。

なぜノウハウ管理が重要なのかというと、どれだけ優れたノウハウも意図的に吸い上げなければ他の店には届かず、せいぜい同じ店舗内にとどまってしまい、多店舗チェーンのメリットを活かせないからです。

ナレッジマネジメントの権威である野中郁次郎氏らも、書籍の中で次のように述べています。

「組織的知識創造という言葉を使うが、個人の自発的行動とグループレベルの相互作用がない限り、組織それ自体では知識を作ることはできない。」

引用:野中郁次郎・竹内弘高『知識創造企業(新装版)』(東洋経済新報社、2020年、p.20)

だからこそ、意図的にノウハウを集めて共有する仕組みが必要になるのです。

多店舗チェーンでノウハウ共有が進まない3つの理由

多店舗チェーンでは、優秀な店舗のノウハウが他店に共有されず、改善のチャンスが特定の店舗にとどまってしまうことがよくあります。現場でノウハウ共有がなかなか広がらないのには、多店舗特有の構造的な壁が存在するためです。

①共有する仕組みがない

第一に店舗スタッフが良い工夫を思いついても、「どこで・誰に・どうやって共有するか」という明確な環境が整っていないことが挙げられます。

店頭業務をメインとする店舗スタッフは忙しいため、なかなかノウハウをまとめる時間を確保できません。

さらに共有の基準がないと、「こんな些細なことでも発信していいのか」「間違っていたらどうしよう」という不安が生まれ、共有をためらってしまいます。

たとえば「天候に合わせて陳列を変え、客単価が上がった」という気づきがあっても、共有する環境がなければ、他店に伝わらずに終わってしまいます。

貴重なノウハウを埋もれさせないためには、ただ場所を用意するだけでなく、現場が迷わず安心して発信できる仕組みづくりが第一歩です。

②現場がメリットを感じにくい

現場のスタッフが「ノウハウを共有しても自分にメリットがない」と感じてしまうことも、共有が進まない大きな要因です。

自分の発信に対する反応やフィードバックがなく放置されると、投稿内容が組織に活かされていないと感じ、意欲は低下します。

さらに「自分だけの仕事のコツを公開しても評価に繋がらない」「むしろ優位性が失われて損をするのではないか」という心理も、発信をためらわせる原因になります。

たとえば苦労して見つけた業務のコツも、共有するメリットがなければ自分の中に留めておこうとするのは自然な感情です。

ノウハウ共有を定着させるには、発信に対して「いいね!」やコメントで反応が見える仕組みを整え、共有した人が正しく評価される文化をつくることが重要です。

③蓄積されても活用されない

ノウハウは蓄積されるだけでなく、必要なタイミングで現場に届いて初めて活きます。

業務連絡と同じ場所で共有して両者がまざってしまうと、有益な投稿が他の連絡に埋もれて見つけにくくなります。

加えて、本部が好事例を全店へ展開しようとしても、資料化して再配信する手間がかかれば、タイミングを逃してしまいます。

たとえば本部がバレンタインデーの売場画像を受け取った中から好事例をまとめて共有しても、シーズン終盤にとなれば他店は取り入れることなく終わってしまいます。

業務連絡とノウハウを分けて運用し、本部が再配信の手間をかけずにそのまま全店へタイムリーに届けられる環境が求められます。

ノウハウ管理を導入するメリット

ノウハウ管理を適切に導入・運用することで、多店舗チェーンにはさまざまな恩恵がもたらされます。代表的なメリットは以下の3つです。

・優秀な店舗の実践知を水平展開できる

・現場のノウハウが属人化せず、組織の資産になる

・新施策・成功事例を全店舗へ迅速に展開できる

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

①優秀な店舗の実践知を水平展開できる

ノウハウ管理の導入により、優秀な店舗の実践知が他店に共有され、チェーン全体の業務品質や売上の底上げにつながります。

多店舗展開において、売上の高い店舗が「現場でどんな工夫をしているのか」は他店から見えにくいのが実情です。

ノウハウ管理によって日々の実践知が共有・体系化されれば、特定の店舗にとどまっていた良いやり方を他店へ水平展開するきっかけとなるでしょう。

たとえば、売上上位店が実践する「特別感を演出するギフトラッピングの工夫」や「ついで買いを促すレジ横のPOP配置」といった現場の工夫を、規模や客層が似ている他店舗がそのまま真似して取り入れることが可能です。

実践知が効果的に水平展開されることで、チェーン全体のパフォーマンス向上につながります。

②現場のノウハウが属人化せず、組織の資産になる

ノウハウ管理を導入するもう1つのメリットは、個人の頭の中にある知識を組織の資産として残せることです。

多店舗展開を行う業態は、社員やベテランスタッフも含めて人材の入れ替わりが激しい傾向にあります。

そのため、ノウハウが個人に依存する属人化がおきていると、スタッフの退職や異動のたびに業務効率の低下や新人教育の負担が増します。

日々の実践知をシステム上に蓄積しておくことで、人が入れ替わっても、現場で培われた経験やコツが組織に残り続けます。

結果として、スタッフの入れ替えによる影響を抑えて、チェーン全体の財産として安定した店舗運営を実現できるでしょう。

なお、業務の属人化が起こる原因や、それを解消するための具体的なステップについてはこちらをご覧ください。

③新施策・成功事例を全店舗へ迅速に展開できる

ノウハウ管理を導入する3つ目のメリットは、本部が新施策や好事例をタイムリーに全店へ展開できるようになることです。


これまでは、現場から上がってくる各店の日報や報告内容をチェックし、有益なノウハウを探し出して全店向けに資料化し直すという手間がかかっていました。


ノウハウ管理の仕組みが整えば、現場の実践知が「すでに共有しやすい状態」で一元化されて蓄積されていきます。


結果として横展開のコストが下がり、本部の担当者は企画立案や店舗マネジメントといった本来のコア業務に集中できるようになるでしょう。

ノウハウ管理を現場に定着させる「導入3ステップ」

「新しいツールを導入しても、店舗に定着するのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。

ノウハウ管理に限らず、新しい取り組みを現場に根付かせるには、「無理なく続けられる仕組み」になっているかが大切です。

現場での活用をスムーズに促すために、以下の3つのステップを踏んで導入を進めることをおすすめします。

ステップ1:一部の店舗でテスト導入する

最初のステップは、全店一斉に始めるのではなく、数店舗に絞ってテスト導入を行うことです。

最大の目的は、「現場の反発を抑え、無理なく続けられる運用ルールを本部と一緒に作ること」です。

いきなり全店へ新しいツールやルールを導入すると、反発や導入後の自然消滅を招きかねません。

本部とのコミュニケーションが取りやすく、率直な意見を言ってくれる店舗を中心に絞ってスタートすると、現場の懸念を事前に把握できます。

その際スタッフに頻度や投稿内容、本部からのフィードバックなど気になる点についてヒアリングし、運用ルールを微調整していくわけです。

このように、現場の納得感を得ながら「自社に合った勝ちパターン」を作ることが、スムーズな全店展開への第一歩となります。

ステップ2:投稿のハードルを下げるルールを決める

テスト結果をもとに、現場が継続的に共有できる運用ルールを整えます。

現場で培われた暗黙知は、そもそも言語化が難しいものが多いため、詳細な説明を求められると共有のハードルが高くなってしまいます。

たとえば陳列のコツや接客の動きなどは、売場画像や短い動画をメインにひと言添える方が直感的に伝わります。

まずは「短文や画像、動画だけでもOK」というルールから始め、「ちゃんと書かないといけない」という心理的な壁を取り除くことが継続のポイントです。

なお、現場から無理なく情報を集める方法については、こちらもあわせてご覧ください。

ステップ3:本部が拾って発信する運用を開始する

現場から集まる投稿には、店舗同士の気軽なリアクションでそのまま広がっていくものから、マニュアルやオペレーションの見直しに値するものまで様々です。

日常的な工夫は他店が自由に取り入れられる環境をつくるだけで十分ですが、チェーン全体に関わる実践知については本部が積極的にピックアップし、正式な形で全店に展開することが重要です。

いずれの投稿であっても、本部からのリアクションや展開がなければ現場は共有の意義を感じられず、発信は続きません。

日々の投稿を把握し、リアクションとタイムリーな横展開の両面で動ける運用体制をつくることが、ノウハウ管理定着の鍵です。

ノウハウ管理ツールを選ぶポイント

ノウハウ管理を効率的に進めるには、ツールの活用が有効です。多店舗チェーン特有の環境を考慮した、ツール選びの3つのポイントを解説します。

店頭作業の合間に気軽に投稿できるか

ツール選びでまず確認すべきなのは、少ない操作で直感的に投稿できる仕様になっているかどうかです。

接客や品出しなどのコア業務で忙しい店舗スタッフにとって、システムへの入力にかかる手間は大きな負担となり、使われなくなる原因になるためです。

たとえば、都度バックヤードに戻ってパソコンを開かなければ投稿できない仕様は、現場の負担になります。

モバイル端末でちょっとした気づきを短いテキストで打ち込んだり、撮影した写真をその場で直接アップロードできたりと、数回のタップで完結するUIが求められます。

現場の反応が見える仕組みがあるか

双方向のコミュニケーションを促すリアクション機能が備わっているかも、確認しておきたい重要なポイントです。

日報や報告書のような一方通行のシステムでは、誰が見ているのか分かりにくく、見る側も反応を返すハードルが高くなります。

そのため、たとえば、SNSのように投稿に対して「いいね!」やコメント機能が搭載されているツールが理想的と言えます。

他店や本部からのリアクションもあれば、発信者のモチベーションは大きく上がります。

さらに、「いいね!」数が多い順に投稿を自動で並び替える機能などがあると、本部の集計手間をかけずに現場のモチベーションを高めることができるでしょう。

ノウハウが埋もれるのを防ぐ運用ができるか

現場から集まる大小さまざまなノウハウを上手く活用するには、情報をタイムリーな「フロー情報」と、後から見返す「ストック情報」に分けて運用することが重要です。

一般的なビジネスチャットは気軽な反面、フロー情報として時系列で流れてしまいます。たとえば業務連絡と同じ場所で「夏休みの陳列の工夫」を共有すると、後で見返しにくくなるでしょう。

一方で、社内wikiなどの本格的なナレッジ管理ツールはストック情報の整理に優れていますが、店頭作業と並行して入力するには現場の負担が大きすぎます。

したがって、まずはチャット感覚で気軽に情報を集め、全店に役立つ実践知が生まれた際はマニュアルとしてストックする。

このように、運用とセットで回せるツールを選ぶことが大切です。

多店舗のノウハウ共有・展開を一元化するツール「店舗Linkle」

店舗Linkleは、本部と店舗間で双方向にコミュニケーションしたり、マニュアルをストックして共有したりできる機能を標準搭載しています。

・社内SNSのコミュニティ機能

・画像共有に特化した画像投稿機能

・セキュアな環境で動画を共有できるストリーミング機能

・スムーズにマニュアル共有できるファイルBOX機能

コミュニティ機能や画像・動画投稿機能を使えば、現場のスタッフはモバイル端末で気軽にノウハウを発信できます。

SNSのように投稿へ「いいね!」を押せるため、現場のモチベーション維持に繋がります。

特に、画像投稿機能には「いいね!」獲得数順に並び替える機能も備わっているため、優良事例のピックアップや人気投票を実施する際の手間もかかりません。

集めた後の有益な実践知はマニュアルなどに反映させ「ファイルBOX機能」に格納することで、全店共通のマニュアルとしてより現場に浸透させることが可能になります。

【店舗Linkleの導入事例】

実際に「店舗Linkle」を導入し、現場のノウハウやアイディアを活用している株式会社マルイチの事例をご紹介します。

同社では、店舗から商品部への発信の場としてコミュニティ機能を活用しています。

部門ごとにグループを作成し、各店のチーフやバイヤーが日々、タイムリーな情報共有を行っています。

たとえば、店舗独自に単品大量販売の施策を行った際、売場画像や売上・利益などの数字をまず投稿し、数日後に結果も投稿しています。

最も「いいね!」が多く集まった投稿を半期に1回表彰することで、現場のモチベーション向上にも繋がり、店舗からの気軽な投稿がきっかけとなり、本部で正式に商品化された事例もあるとのことです。

※実際の導入事例インタビューはこちら「商品部から各部門担当への通達を徹底

まとめ

多店舗チェーンのノウハウ管理は、現場の暗黙知をいかに意図的に吸い上げ、全店で活用できる状態にするかが出発点です。

仕組みがなければどれだけ優れたノウハウも同じ店舗内に留まり、多店舗チェーンのメリットを活かせません。

継続的にノウハウを集めるためにも、現場が気軽に投稿でき、良い実践知がチェーン全体に広がるサイクルをつくることが定着への近道です。

ツール選定では、店舗が利用することを踏まえ、スマホで手軽に投稿できるか、反応が見える仕組みがあるか、ノウハウが埋もれるのを防ぐ運用ができるかをチェックすることをお勧めします。

多店舗チェーンのノウハウ管理にお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。

関連記事